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白井晟一の都市へのまなざし 「記号と暗号」小能林宏城

以下は1974年11月号の『商店建築』に小能林宏城氏が書きおろしたノアビルについての論考からの抜粋である。

 

「東京・神谷町の一角に きわめて起伏にとみ 複雑な地形の四つ辻がある。最近そこに 怪異というべきか あるいは異相と呼ぶべきか 一種特異な相貌をもつ塔状建築が出現した。」

「かつて この建築物が立つ敷地周辺や街区は静かな住宅街と下町的な商店街とが 奇妙な具合に入りまじる雰囲気をもっていた。すくなくとも 私が少年時代の頃から学生の頃にかけては そうであった。ところがお定まりのように この地区や街角も急激な都市開発?のために 大小のビルやマンションが無秩序に立ち代わり 雑然と喧騒が支配する街区になってしまった。」

「白井の塔状建築の出現は ここの町辻や周辺街区のタウン・スケープ全体が変ったわけではないのに 確実に特異な雰囲気をもつ町辻をつくり出したのである。」

  

「このような城門や隧道のような開口部と壁の量塊感は 外の世界や空間に対してかたくなな閉鎖感と拒絶性を示し 内部の空間や世界の強固な護持への意志すら感じさせる。

 ところが オブジェが刻み出された壁龕やその付近の壁は逆転して あたかも路上の空間を内部と錯覚させるような 包囲感や呼びかけのセンチメントを放散するのだ。なんという背反効果だろうか。

 ここでは 一方で閉鎖と拒絶を 他方で包囲と呼びかけを 交互に あるいは同時に 表現し暗示しているのだ。上部マッスのシャフトにしてもそうである。」

 

「この基壇と塔は 昼間坂下から仰ぎみると 圧倒的な屹立感と凝結感で迫ってくるが その夕景や夜景は ガラリと表情を変転して 芝居の書割のような幻想的で虚構的な雰囲気を醸成するのだ。塔の壁面に不規則に散りばめられた数少ないスリット状の窓々や曲面ガラスを巻き獟らしたくびれや あるいは下部マッス中央の穿口からこぼれ出る光の綾なしが マッスのつくるシルエットの幽暗の中に浮かび出る。ここでは強固な表情は失せて 抒情的な幻想とでもいうべき表情がかわって立ち現れる。新たな都市の表情が現出してくる。」

 

 

16:59 | 白井磨パーソナルブログ 「柊心居にて」 | comments(0) | -
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